新型肺炎コロナウイルスを怖れて
~2020(令和2)年6月23日までの経過の中で~
至誠学舎立川 理事長橋本正明
世界を震撼とさせている新型肺炎コロナウイルスです。我が国において影響が始まったのは半年前、本年1月のことでした。もう遠い昔のように感じます。しかしこの半年の間に世界が大きく変わった感を持つのは私だけではないでしょう。今年のオリンピックを、開催するかしないか甲論乙駁の議論があったなどほぼ忘れ去られてしまいました。
この間いろいろなニュースが飛び交わされました。そこには私たちの運命のハンドルを握る、世界の政治家の力量や判断力、誠実性、社会観が露わにされたと言えましょう。明確化されたのは感染症とは常に人類を脅かし続けているという事です。
そして私たちの社会を支える人々、エッセンシャルワークという地味でありながら社会の基盤を支え動かしてくれている「人と組織」の誠実な働きがあること。
僭越ですが、私たちの法人の仕事はその一翼を担っています。そして組織の理念を高く掲げ、そこに所属し働く人々の気持ちをいかに奮い立て、仕事に取り組んでいただくか、リーダーとしての理事長の大きな役割と責務と強く認識してきました。
まだこのウイルスに対して私たちは勝利したとは言えません。まだまだ薄氷を踏む思いで毎日を過ごしています。しかし私たちの社会は気が付きました。この感染症を撲滅するのではなく、「共に在る生活」をしていく事だと。言葉を換えれば「正しく怖れて対処する」という事。今でもインフルエンザ、コロナ、ペスト、赤痢、そして結核も常に私たちの生活のそばにいます。もちろん予防のワクチンや劇的な治療薬の開発を待ちつつ、生活の中で正しい対応をしながら毎日を過ごしていくしかありません。現場の力に深い畏敬と感謝の言葉しかありません。
その上で1500人のスタッフが働く法人の理事長としての役割として、職員へのメッセージを幾つかの節目に当たって発出してきました。将来法人のその間対応を検証する資料と為ることを思い以下にその文書を掲載させていただきます。
発出は2月25日、3月9日、4月1日、4月8日、6月22日の5回でした。それぞれ内外の節目の折の発行でした。
第1号 コロナ蔓延の兆しの中で
2020年2月25日
至誠学舎立川 管理者各位
理事長 橋本正明
日ごろ業務精励ご苦労様です。年度末の慌しい折に新型肺炎(コロナウイルス)の蔓延のニュースに、心が落ち着きません。法人の各施設関係者においても感染の可能性が否定できません。しかしその危険度はインフルエンザ・ノロウイルスと同レベルではないかと考えます。落ち着いた対応をお願いします。
不安の基は予防接種や治療薬がまだ出来ていないことです。特に乳・幼児や高齢者は発症が重大な結果になる可能性があるので十分注意を払ってケアに当たってください。対応は他の感染症の発生時と同様です。折から慎重にお願いをします。
現状ではイベントや行事などについて2月23日に厚労省からQ&Aが示されています。参考にして個々の状況と必要性に応じた判断と対応を各事業本部でお願いします。ただし、実施する際にも来賓のご招待は慎重にお願いします。
以上
厚生労働省HP Q&Aから(一部略) 2020.2.23
Q:イベントや行事など開催については、どのように対応すれば良いですか?
A:以下の通り
最新の感染の発生状況を踏まえると、屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いることが、感染のリスクを高めるとされています。そのため、イベントなど感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況などを踏まえ、開催の必要性を検討していただくようお願いします。なお、イベントなどの開催は、現時点で政府が一律の自粛要請を行うものではありません。
また、開催する場合は、参加者への手洗いの推奨やアルコール消毒薬の設置、風邪のような症状のある方には参加しないよう依頼をすることなど、感染拡大の防止に向けた対策を徹底してください。
風邪のような症状がある場合、仕事を休み、外出を控え、手洗いや咳エチケットの徹底など、感染の拡大防止につながる行動をお願いします。
第2号 「正しく怖れよ」私生活の自粛要請
2020年3月9日
至誠学舎立川職員各位
新型肺炎コロナウイルスに関しての私生活自粛の要請
理事長 橋本正明
現在、新型肺炎コロナウイルスの発生が全世界的に広がり、わが国も危険地域として報道がなされています。また東京都内でも保育園、高齢者施設・デイサービスの職員の感染が伝えられています。
法人としてのスタンスは「正しく恐れよ」という事で、通常の感染症対策を一層強化して利用者の健康保全、各施設の適切な施設運営を指示しているところです。
インフルエンザ、ノロウイルス、疥癬等常に多くの人が利用している福祉施設において感染症の危険は常に存在します。特に循環器系、呼吸器系の疾病を持つ虚弱者が感染すると重篤な症状を呈することが予測されます。そのような利用者へのケアを担当する方は自身の健康管理に十分配慮し日々のケアに当たっていただくことが重要です。
今回の感染経路の報道では一般的な人から人への感染ではなく、換気が悪く密集した室内で、感染者がいるところでの空気感染が主だと言われています。しかし誰が感染者であるかは事前には分かりません。ここで私たちが注意することは自分自身がウイルスを運んでしまうことがないようにそのような危険のある場所には極力いかないという判断が重要です。
自分自身がウイルスの感染者・仲介者となり、利用者に感染させないために私生活においても当面自粛した生活を心がけること要請します。 以上、
第3号 2020年度新規採用職員を迎えて
2020年4月1日
(社福)至誠学舎立川 2020年度採用者 各位
新型肺炎コロナウイルスに関しての職員私生活自粛の要請
至誠学舎立川理事長 橋本正明
現下、新型肺炎コロナウイルスの感染者、発症者拡大の勢いが続いています。つきましては対人援助活動を働きとする皆さんがウイルスの媒介者になって事業所に持ち込むことは絶対に避けなければなりません。現在の発症者の約半分は感染経路不明だそうです。それは感染をした若い人の多くは発症しないことが理由のようです。感染に気が付かないで仕事に就かれ、利用者に感染させる事を危惧します。
法人では3月9日付で以下の文書により職員に私生活の自粛を要請しています。皆さんにも同様に要請をします。期間はこのコロナウイルスの危機が去るまでと認識ください。
第4号 緊急事態宣言を受けて
2020年4月8日
至誠学舎立川職員各位
新型肺炎コロナウイルスに関する緊急事態宣言発令への対応
理事長 橋本正明
4月7日火曜日、法律に依る新型肺炎コロナウイルスに関する緊急事態宣言が発令されました。東京都としての具体的な対応指示も近日中に出されると思います。それを踏まえて法人としての対応は決まりますが、その上で現場での間違いのない対応をお願いします。基本は従前から申し上げている、「正しく怖れよ」です。
私たちは日頃から感染症に対しては正確に把握し、行政の指導を受け、マニアルを持ち、対応の経験を積んでいます。その基本を忘れずに正しく事に臨みましょう。
緊急事態期間は5月6日、連休明けまでとされていますが、状況によりもっと延長されるかもしれません。しかし従来の経験では、感染症はピークを過ぎれば徐々に治まってきます。今は目の前のことに戸惑わされず間違わず対処する事を心掛けましょう。
この緊急事態が福祉現場の運営、利用者のケア、また私たちの生活にどのような影響を及ぼすか分かりません。しかし私たちの仕事は社会的な使命を持った専門職の働きです。この有事の際にこそ「まことの心」のはたらきが問われていることを肝に銘じ、組織としても福祉専門職としても自覚して対応、努力していきましょう。
一方、現場で働く皆さんはご自身の健康管理に十分配慮し日々のケアに当たっていただくことが大切です。私たちが注意することは、自分がウイルスを運んでしまうことがないように危険のある場所には極力いかないという判断と行動が重要です。
自分自身がウイルスの感染者・仲介者となり、利用者に感染させる事がない様に緊急事態宣言が要請する私生活においても自粛した生活を心がけることに徹してください。
以上、この文書の意図するところを十分理解し、日々のお仕事に取り組まれることをお願いします。 以上、
第5号 東京アラート解除後の自粛生活要請
2020年6月22日
至誠学舎立川職員各位
コロナウイルス警戒・東京アラート全面解除後も私生活自粛の要請
理事長 橋本正明
現在、行政・公衆衛生当局、そして真面目な態度(Nudge)で対応された多くの市民の努力により、新型コロナウイルスの発生も収まりつつあるようにみえます。お陰様で現在のところ至誠学舎立川法人事業全体でも利用者、職員の感染・発症の報告はありません。関係者各位の普段からの感染症対策、そして今回の緊張の下での努力で水際対策が成功しているのだと思います。皆さんの誠実なご努力に感謝いたします。
政府の去る5月25日の緊急事態措置の解除、そして東京独自の施策、東京アラートが6月19日に解除になりました。これで多くの事業者への休業要請が緩和されました。
しかし、東京においてはまだ新たな感染者が発見されています。これは検査体制の充実の結果だとは思いますが、6月17日/16人、18日/41人、19日/35人、20日/39人、21日/35人と感染者が報告されています。そして感染者の8割には自覚症状がなく、発症もしないといわれます。しかしウイルスには強い感染力があり、虚弱者・高齢者、最近は子供への感染も報告されています。それが怖いのです。
そこで待たれるのは予防ワクチンと治療薬の開発です。それまでは緊急事態宣言が解除になろうとも、東京アラートが解除になろうとも、職員の皆さんに以下の自粛した生活を要請します。
むやみに繁華街に出かけない、人込みでのマスクの使用、手洗いの励行、食事と運動に注意し健康な生活を送る。体調を崩したら即安静。
我々がコロナウイルスの媒介者になることは絶対にあっては為ってはなりません。それが私たちの仕事の「職業倫理」です。 以上、